今年はオーロラの当たり年、という言葉を聞いたことはありますか? これは太陽が約11年周期で極大期を向え、活動的になるという現象が関係しています。では、逆側の極小期にはオーロラは見れないのでしょうか。もちろん、そんなことは”全く”ありません。太陽活動周期とオーロラの関係を考えてみましょう。
太陽活動周期
約11年ごとに訪れる黒点数の変化
太陽面に現れる黒点の数は、約11年の周期で増えたり減ったりを繰り返しています。この黒点数の計測から導き出した約11年で変動する太陽活動のサイクルを「太陽活動周期」と呼びます。
黒点数が最も多く、太陽活動が最も活発な時期を「極大期」と言い、逆に活動が最も穏やかになる時期を「極小期」と呼んでいます。極大期には太陽フレアと呼ばれる太陽面の爆発現象やコロナ質量放出(CME)の発生件数も増加し、地球磁気圏への影響も強くなります。一方、極小期には殆ど黒点が現れず、太陽面の爆発現象も少なくなりますが、代わりにコロナホールの出現が多くなるという特徴があります。
活動周期の計測は1775年から始まり、それぞれ「サイクル1」「サイクル2」と番号が振られています。現在は「サイクル24」で、2008年12月より始まりました。下のサイクル表を見ると分かりますが、周期は決して11年ごとに切り替わるわけではなく、長い時で13.7年、短い時で9.0年と、実際には周期にばらつきが見られています。この理由は、あくまでも周期の切り替わりが計測された黒点数の最大値と最小値の相対数によって決められるためです。
太陽活動周期一覧リスト
周期 | 開始年月 | 終了年月 | 周期期間 (年) | 活動極大 |
サイクル1 | 1755年3月 | 1766年6月 | 11.3 | 1761年6月 |
サイクル2 | 1766年6月 | 1775年6月 | 9.0 | 1769年9月 |
サイクル3 | 1775年6月 | 1784年9月 | 9.3 | 1778年5月 |
サイクル4 | 1784年9月 | 1798年5月 | 13.7 | 1788年2月 |
サイクル5 | 1798年5月 | 1810年12月 | 12.6 | 1805年2月 |
サイクル6 | 1810年12月 | 1823年5月 | 12.4 | 1816年5月 |
サイクル7 | 1823年5月 | 1833年11月 | 10.5 | 1829年11月 |
サイクル8 | 1833年11月 | 1843年7月 | 9.8 | 1837年3月 |
サイクル9 | 1843年7月 | 1855年12月 | 12.4 | 1848年2月 |
サイクル10 | 1855年12月 | 1867年3月 | 11.3 | 1860年2月 |
サイクル11 | 1867年3月 | 1878年12月 | 11.8 | 1870年8月 |
サイクル12 | 1878年12月 | 1890年3月 | 11.3 | 1883年12月 |
サイクル13 | 1890年3月 | 1902年2月 | 11.9 | 1894年1月 |
サイクル14 | 1902年2月 | 1913年8月 | 11.5 | 1906年2月 |
サイクル15 | 1913年8月 | 1923年8月 | 10.0 | 1917年8月 |
サイクル16 | 1923年8月 | 1933年9月 | 10.1 | 1928年4月 |
サイクル17 | 1933年9月 | 1944年2月 | 10.4 | 1937年4月 |
サイクル18 | 1944年2月 | 1954年4月 | 10.2 | 1947年5月 |
サイクル19 | 1954年4月 | 1964年10月 | 10.5 | 1958年3月 |
サイクル20 | 1964年10月 | 1976年6月 | 11.7 | 1968年11月 |
サイクル21 | 1976年6月 | 1986年9月 | 10.3 | 1979年12月 |
サイクル22 | 1986年9月 | 1996年5月 | 9.7 | 1989年7月 |
サイクル23 | 1996年5月 | 2008年12月 | 12.6 | 2000年3月 |
サイクル24 | 2008年12月 | |||
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太陽磁場の反転
太陽活動周期で起こる太陽磁場の反転
太陽活動周期は、単純に約11年に一度だけ太陽が活動的になるというだけではありません。各サイクルごとに太陽内部では大きな変化が起こっていますが、その一つが太陽磁場の反転です。サイクルが切り替わると太陽の北極と南極の磁場が弱まりゼロにリセットされ、両極にはプラスとマイナスを反転させた新たな磁場が現れるのです。磁場の反転は南極と北極で同時に起きるわけではないため、磁場の移行期には太陽面に複雑な磁場の形が現れることがわかっています。
磁場の反転は太陽だけに起こる現象ではありません。地球にも磁場があり、過去360万年の間に地球では11回も北と南が入れ替わりました。太陽の磁場は約11年で反転するため、約22年ごとに磁極は二回の反転によって元の状態に戻ります。約11年ごとのサイクルは「シュワーベ周期」と呼ばれ、約22年ごとのサイクルは「ヘール周期」と呼ばれます。
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活動周期とオーロラの関係
オーロラはいつでも出る可能性がある
太陽活動が活発な時に強いオーロラが出ることは間違いありません。しかし、それら活発な太陽活動に起因するオーロラは、オーロラ全体の発生数からすると10%から20%ぐらいであり、それ以外の80%から90%は突然に起こる気まぐれなオーロラです。『11年周期を逃すと次のピークまでオーロラは見れない。』と思われがちですが、決してそういうわけではなく、実際には太陽の極小期でもオーロラは良く現れています。
太陽サイクルが極大期に向かうと太陽フレアやコロナ質量放出(CME)の発生率が高まり、強い太陽風を起こします。しかし、この時期の太陽には同じく強い太陽風の原因となるコロナホールが殆ど現れません。一方、太陽サイクルが極小期に向かうと徐々にコロナホールの出現率が高まり、巨大なコロナホールが非常に強い太陽風を起こすこともあるのです。
オーロラは遭遇確率のことばかり考えがちですが、その出現の法則にはまだまだ予測不能な未知の要素が多くあるため、結局のところ「運」に左右されてしまうものです。当然、極大期の年でも全くオーロラが見れないことはあり、極小期の年でもオーロラ爆発やカーテン状に揺れるオーロラが出ることは珍しいことではありません。太陽活動が続く限りオーロラは出続けるということです。
ヤムナスカ・マウンテン・ツアーズ 本山直人 |
極小期に現れた巨大なオーロラ
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オーロラは見たいと思った時に見に行くべき!
極大期にはオーロラの発生率が上がることは事実です。しかし、極大期だからといっても必ず見れるわけではありません。最近で一番近い極小期は2009年の冬ですが、この時のカナダでは強いオーロラが観測されています。大切なのは極小期だろうとなかろうと、オーロラはいつでも発生する現象であることを知ることです。
実際の旅行プランを立てる時、いくら次の極大期を待ちたいからといっても、11年後の予定を組むのは現実的ではありません。そして、太陽活動のピークがずれ込み、14年後、15年後になることも十分に考えられます。4年から5年という時間のズレは、長い宇宙の時間の中では、ほんの一瞬の誤差でしかありません。結局のところ、オーロラは見に行ける時に挑戦してみたほうが良いと言えるのです。ポジティブに考えて、自分の運を試してみましょう。
2009年1月26日。カナダ、ホワイトホースで撮影。
2009年2月14日。カナダ、ユーコン準州で撮影。
2008年3月9日。北緯51度のカナダ、キャンモアで撮影。非常に強いオーロラが発生した日。
最後に、オーロラにまつわるトリビアを集めてみました。
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