素晴らしいオーロラに出会えたら、誰でも写真として残したいと思うものです。では、実際にオーロラを撮影するには、どのようなカメラ機材が必要なのでしょうか。もちろん、カメラならなんでも良いという訳ではありません。しかし、カメラの種類を比較する前に、どのカメラでも必要となる必須の機能について考えてみましょう。
オーロラ撮影
コンパクトデジカメ? それとも、一眼レフカメラ?
最近はすっかりデジタルカメラが主流となったため、フィルムで撮影する人は一部のマニアの人ぐらいかもしれません。もちろん、オーロラを撮影するための機材は、フィルムであろうとデジタルカメラであろうと関係はありません。大切なのは使用するカメラがそれ相当の機能を備えていることです。高性能の一眼レフカメラが良いことに間違いはありませんが、最近ではコンパクトタイプでも十分に綺麗なオーロラ写真を撮影できる機種も増えてきました。カメラの種類を考える前に、オーロラ撮影に必要なカメラの機能について考えてみましょう。
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なぜオーロラの撮影は難しいのか?
皆さんも暗い中で撮影した写真がブレていたりノイズが乗っていたりして、思うような写真が撮れなかった経験があるはずです。オーロラの撮影は暗い場所で光りながら動くものを撮影するという、とても特殊なものです。本来、動く被写体をブレずに撮影するためには、シャッタースピードを速めて瞬間で撮影する必要があります。しかし、暗い中で写真を撮るためには、ある程度の光をセンサーに与えないと被写体を焼き付ける(記録する)ことができません。つまり、シャッタースピードをある程度まで遅くしないとオーロラは写らないのです。このように、”暗い中で可能な限りシャッタースピードを速くしなくてはいけない。”という要素が、オーロラ撮影を難しくしています。
撮影に使用するカメラは性能が良いに越したことはありませんが、最低限、考えるべき機能は3つあります。それは「シャッタースピード」「レンズの明るさ(F値)」「ISO感度」です。少し専門的な話になりますが、この3つの機能についてしっかりと掘り下げてみましょう。
必要な3つの機能
カメラに必要な機能 1
シャッタースピードのコントロール
10秒から15秒ほどのシャッタースピードが目安
シャッタースピードのコントロールは、オーロラ撮影において非常に重要なポイントです。カメラで被写体を写すには「光」が必要です。日中などの明るい光の下では速くシャッターを切ることができますが、逆に夜間などの弱い光の下ではたくさん光を集める必要があるため、より遅いシャッタースピードが必要となるのです。しかし、オーロラ撮影ではシャッタースピードを可能な限り遅くするのが良いわけでもありません。シャッタースピードが遅いということは何度も光を重ね撮りすることになり、オーロラが”ボヤっ”とした光の塊として写ってしまいがちです。動きのあるカーテン状のオーロラを撮影するなら、光が写るギリギリの範囲で可能な限り速いシャッタースピードが必要となるのです。
オーロラの光が非常に強い「オーロラ爆発」の時は別ですが、一般的なオーロラの強さの場合、オーロラの光を綺麗に撮影するためには10秒から15秒ほどのシャッタースピードが目安となります。しかし、シャッタースピードが遅いということはブレやすくなるということを忘れてはいけません。三脚の使用は必須と考えてください。
シャッタースピードを遅くすると何度も光を重ね撮りすることになり、光は強く重なり合って写ることになる。
コンデジの場合、マニュアルモードなどでシャッタースピードの変更が可能なものが良い。
カメラに必要な機能 2
レンズの明るさ(F値)と画角
なるべく広角で、明るいレンズを選ぶ
暗い中で撮影をした時、シャッターが非常にゆっくりとしか切れない経験をしたことがあると思います。これは周囲の光が足りず、よりたくさんの光を集めるためにカメラが自動で動作したためです。オーロラなどの夜間の撮影では、暗い中でわずかな弱い光を最大限に利用することが大切であり、画角が広く(ワイド)、明るいレンズのほうが有利ということになります。
レンズの明るさは「F値」という数値で表記され、「F2.0」「F5.6」などで表されます。この数値が小さいほど明るいレンズであり、一般的には明るいレンズほど価格も高価になります。また、同じF値のレンズの場合は、より画角が広い方が入射する光の量が増え、シャッタースピードを速くすることができます。そのため、オーロラ撮影ではより広角でワイドなレンズの方が、迫力のある光の姿を撮影することができます。理想的なレンズ画角の目安は、35mm換算で24mm以上の広角レンズであり、より明るい(F値の小さい)レンズが有利となります。
※本来、F値とは”絞り具合”を意味していますが、オーロラ撮影では最も絞りが開放された状態で使うことが前提となりますので、ここでは絞りの詳しい説明は省きたいと思います。
F値と画角はレンズに表記されていることが多い。
24mmの広角レンズで撮影したオーロラ。
カメラに必要な機能 3
ISO感度のコントロール
高感度でもノイズの少ないカメラを選ぶ
ISO感度とは、デジタルカメラが光を捉える能力の値と言うことができます。ISO感度の数値が高ければ、より敏感に光を写しとり、より速いシャッタースピードを切ることができます。つまり、ISO感度を高く設定することができれば、暗い夜間で明るさの(F値)の低いレンズを使用してもオーロラの撮影が可能となるのです。
ISO感度とは夢のような機能ですが、良いことばかりでもありません。ISO感度の値が高くなると画像にノイズが乗りやすくなり、数値の大きさに比例して画質が悪くなっていく傾向があります。画質を優先するなら「ISO50」から「ISO100」あたりに設定したいところです。しかし、夜など暗い中での撮影の場合は低感度のためにわずかな光しか捉えることができず、結果として非常に遅いシャッタースピードが必要となってしまいます。そのため、オーロラを撮影するのに理想的なカメラとは、高いISO感度でもノイズの乗りにくいカメラとなるのです。中級クラスの一眼レフになると、ISO感度1600以上でも非常にノイズの少ない性能のものが多くあります。
ISOの設定が可能なカメラは必須。ISO800以上でノイズの少ないカメラが理想的。
CANON 5D MARK2 / ISO1600で撮影。ほとんどノイズは目立た無い。
露出と感度の関係
シャッタースピード、F値(絞り)、ISO感度の関係
シャッタースピード、F値、ISO感度の関係性は、カメラの最も基本的な原理の一つです。ある程度カメラ撮影の経験のある人は、この関係性を良く理解していると思いますが、なかなか初心者には敷居が高く、カメラが難く思われてしまう原因の一つでは無いでしょうか。
これら3つの要素はお互いに影響しあい、写真の明るさ(露出)を決めることになります。露出のコントロールは写真の仕上がり方、絵作りを決める最も重要なポイントであり、撮影環境に合わせたそれぞれの設定具合により、出来上がる絵の雰囲気が決まってくるという訳です。
本来、これらの関係性を説明する上で、絞りや背景のボケ具合、開放値、段組などについて説明すべきところですが、これらの難しい話は他のウェブサイトに任せておきます。このサイトはあくまでもオーロラ撮影術の解説サイトですので、ここではオーロラ撮影に特化した、それぞれの関係性を説明したいと思います。
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3つはそれぞれ双方に関係し合い、露出が決まる。しかし、実際の関係性は、このようにシンプルな三つ巴ではない。
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中級クラスの一眼レフであれば、様々な露出バランスに挑戦できる。
一般的なオーロラ撮影の例
最も一般的な撮影状況を想定してみましょう。良く晴れた夜、月明かりもあまりない中で、カーテン状の良いオーロラが現れたとします。試しに一眼レフ中級クラスのカメラボディーで、F値は「5.6」のレンズを使い、ISO感度は「100」、シャッタースピードは「10秒」で撮影してみたとしましょう。もし【画像A】のように、ほとんどオーロラが写らないとしたら、露光不足と考えます。この時、まず取るべき手軽な方法は2つあり、それはISO感度をさらに上げるか、シャッタースピードをさらに遅くすることです。
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【画像A】
ISO感度を上げてみる
まずは試しにISO感度を上げてみましょう。一気に「ISO6400」まで上げてみれば、きっとオーロラは【画像B】のように、カーテン状に写るはずです。しかし、その代償としてノイズが多くなり、画質が悪くなってしまいます。
次は少し感度を下げ「ISO1600」ぐらいにしてみたとしましょう。結果は【画像C】のようになるはずです。この感度ではノイズは気にならないものの、オーロラの光の弱さが気なります。
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【画像B】
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【画像C】
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シャッタースピードを遅くしてみる
次は、シャッタースピードを遅くしてみましょう。一気に3倍の「30秒」を試してみれば、きっとオーロラの光は強く写るはずです。しかし、オーロラは【画像D】のようにカーテン状ではなく、ボヤとした光の塊として写っていることでしょう。露光時間が増えたことで光を何度も重ね撮りした結果ということです。
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【画像D】
F値を変更する
では、このカメラで綺麗にカーテン状に撮るのはどうすれば良いのでしょうか? 答えは3つ目の要素である「F値」を変えることです。そしてそれは、レンズ交換式のカメラであれば、F値の低いレンズに切り替えることを意味します。
試しにF値「1.8」という非常に明るいレンズに変えてみたとしましょう。ISO感度はノイズが気にならないレベルの「ISO1600」で、シャッタースピードは「10秒」で撮影したらどうなるでしょうか。きっと【画像E】のように、カーテン状もなかなか味のある雰囲気で写るはずです。
このように3つの要素を知ることは、自分の置かれている撮影環境に合わせた適切な絵作りをするために必要です。しかし、これら3つの要素の関係を自由に変更できる機材が必要であることは言うまでもありません。
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【画像E】
次ページは、カメラの種類別にカメラ選びのコツを考えます。
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