オーロラは地球上のどこへ行けば見ることができるのでしょうか。北へ行けば行くほど見ることができると思われがちですが、実はそれほど単純なものではありません。一生に一度は見たいものと称されるオーロラですが、この神秘の現象に出会える場所はとても限られているのです。
オーロラベルト
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オーロラを見に行こう!
皆さんはオーロラを見にいく場所として、どの国を思い浮かべますか? きっとカナダやアラスカなどの北米や、スウェーデン、フィンランドなどの北欧の国々を思い浮かべることでしょう。これらの国々がオーロラ鑑賞地として有名な理由は、それぞれの鑑賞地が「オーロラベルト(帯)」と呼ばれる範囲に含まれているためです。オーロラベルトとは、地球上でオーロラが最も頻繁に現れるエリアのことであり、北半球、南半球ともに緯度60度から70度ほどの範囲を指します。
良く混同されますが、「オーロラベルト」と「オーロラオーバル」は異なります。オーロラオーバルとは、あくまでも”今現在”オーロラが出現している場所を意味しており、宇宙から地球を見た時に極地に出来る、楕円形のオーロラ出現範囲の形状を意味しています。
カナダ、クルアニ・レイク上空に現れた巨大なオーロラ。
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世界のオーロラ鑑賞地
地図を使い、地球上の緯度60度から70度の範囲を見てみましょう。北半球のオーロラベルトを見ると、カナダ、アラスカ、北欧、アイスランドなどの国々が含まれており、これらの地域がオーロラ鑑賞地として適していることが良く分かります。一方、南半球では、オーロラベルトの範囲が南極大陸とその周辺の海上を占めており、鑑賞地として適していないことが分かることでしょう。南半球でのオーロラ鑑賞が有名にならない理由はこのためです。
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世界地図で見るオーロラベルト
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オーロラベルトの下を目指す
北半球のオーロラ鑑賞地が良いとしても、どの場所に行くのが良いのでしょうか? オーロラは常に同じ位置に現れるわけではありません。時間帯やその時の太陽活動の強さによっても大きく変化し、実際には緯度60度より低い場所でも頻繁に観測されます。そのため、この場所が絶対に良いという明確な基準はありません。しかし、オーロラベルトの範囲がオーロラに出会える確率が最も高いことは間違いありません。オーロラ旅行を計画するならば、最低限オーロラベルトの下にある都市を選ぶことが大切です。
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北半球では、北磁極を中心にオーロラベルトの円が描かれる。
ヤムナスカ・マウンテン・ツアーズ 堀口慎太郎 |
オーロラベルトの中心は真北ではない
オーロラベルトが地球上に作る円の中心は、地図上の真北(北極点)、真南(南極点)ではなく、地球磁場の北と南です。平面の世界地図で見るとオーロラベルトが歪んで描かれるのはこのためですね。この歪みは北米であれば中部の辺りに向かって南に大きく膨らみ、緯度60度よりも南の範囲まで占めています。逆に北欧のあたりでは北側に膨らむため、実際に現れるオーロラオーバルの南端は、緯度60度よりも北側に出ることが多くなるのです。
フォート・マクマレーというカナダ中西部の都市は、緯度56度ほどにも関わらず良くオーロラが鑑賞されますが、このベルトの歪みに理由があるのです。【画像A】を見ると、オーロラオーバルの幅が緯度60度よりも低い位置まで広がっていることが良く分かりますね。
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【画像A】2017年1月18日 9:30 UTC のオーロラオーバルの状況。
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世界の3大鑑賞地
オーロラ旅行の人気エリア
インターネットでオーロラ鑑賞地を検索すると、「世界3大鑑賞地」として、カナダ、アラスカ、北欧の国々が良く紹介されています。その理由は、これらの国々がオーロラベルトに含まれていると言うだけでなく、どの国も交通の便が比較的に良く、オーロラ鑑賞に適した施設が多いためです。これらの国々ではオーロラツアーも盛んに行われており、オーロラ旅行の選択肢として常に上位を占めています。それでは、それぞれの国の特長を見てみましょう。
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カナダ 雄大な大自然と晴天率の高さが魅力
森と湖に囲まれ、手つかずの大自然が今なお残る国、カナダは、 ピュアで安全なイメージもあるためか、世界のオーロラ鑑賞地としては常に1、2を争う人気の場所です。カナダの中でも特に有名な鑑賞都市は、ユーコン準州の州都「ホワイトホース」と、ノースウエスト準州の州都「イエローナイフ」です。どちらの町も人口密度の少ない極地地方にあるため、町の郊外は人工物の明かりが少なく、オーロラ鑑賞に適した鑑賞地が多いのも特徴です。
冬は非常に寒くなるため、この点はマイナス要素ではありますが、その分、晴天率が高くなるため、短い滞在期間でもオーロラに遭遇する可能性が高いという、非常に大きなメリットがあります。 『とにかくオーロラ!』という目的で選ぶのであれば、カナダは最もオススメの国の一つです。
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カナダの2大鑑賞地、自分はどちらが向いている?
ホワイトホース、イエローナイフのどちらの町もカナダらしさのあるオーロラ鑑賞地ですが、それぞれの場所で良く行われているオーロラツアーの様式は大きく異なるため、自分にあった旅のスタイルで選ぶのが良いでしょう。
イエローナイフはオーロラツアーの歴史が古く、日本からのツアーも数多く出ています。大型のグループで行うツアースタイルが多いため、その分、料金が比較的に安いのが特徴です。ホテルから移動して観光用に作られた鑑賞施設に訪れるスタイルが一般的であり、手軽なイメージからもオーロラ初心者の人にも人気があります。
一方、ホワイトホースは最近になって脚光浴びてきた比較的に新しいエリアです。世界遺産の山々や野生動物が多く生息し、山岳風景とオーロラの撮影が目的の写真家には特に人気があります。また、ロッジに滞在してオーロラを見る鑑賞地滞在型のツアーが充実しているため、プライベートでゆったりと旅をしたい人や、オーロラ・マニア、リピーターの人には特に人気があります。
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ホワイトホース郊外の人気ロッジ「イン・オンザレイク」上空に現れたオーロラ。
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アラスカ 日本から最も近く、交通の便が良い
アラスカはカナダのユーコン準州と隣接しており、ユーコンと同じく雄大な大自然に囲まれたエリアです。フェアバンクスがオーロラ鑑賞の中心都市となりますが、晴天率も比較的に高く、オーロラ鑑賞にふさわしいエリアと言えます。
カナダのイエローナイフと同じように、日本から大型ツアーが多くあり、気軽に安くオーロラ鑑賞ができる場所として人気がありますが、ロッジ滞在型のツアーも行われています。冬季は日本の大手旅行会社が主催するチャーター便が運航されることがあり、この点が大きなアドバンテージとなります。フライト時間を考えると、日本からの距離が最も近い鑑賞地と言えるでしょう。
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北欧 歴史のあるヨーロッパならではの魅力
北欧の中でオーロラベルトに含まれる、スウェーデン、フィンランド、ノルウェイの3国は、サンタクロースやディズニーなどのおとぎ話の世界観に包まれており、女性には特に人気があります。北米にはない歴史と趣のある町並や、食文化の魅力もあるため、この点も選ぶ理由の一つとなることでしょう。
ノルウェー海を北上する暖流の影響もあり、カナダやアラスカに比べて比較的に気温は高めとなりますが、その分、海上から雲が沸きやすい傾向があります。北欧はオーロラ以外の楽しみが多いエリアのため、「観光」プラス「オーロラ」と考える人向きと言えるでしょう。北欧ではありませんが、同じヨーロッパの中ではアイスランドも、新しいオーロラ鑑賞地として人気が出てきています。
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オーロラが現れる条件
オーロラが現れる時には共通点がある
オーロラはたとえオーロラベルトの下に行ったとしても、必ず見ることができるものではありません。この現象は非常に気まぐれであるため、姿を現さない日もあれば1日のうちに何度も現れることもあるのです。最近ではオーロラ発生の仕組みもだいぶ分かってきましたが、それでもまだまだ不明な点が多くあります。オーロラがいつ出るかを正確に予測するのは難しいことですが、オーロラが現れた時にはいくつかの共通点があることが分かっています。
オーロラを見るためには、最低でも3つの条件が必要と言われています。それは「暗いこと」と「晴れていること」、そして「太陽活動が活発なこと」です。オーロラの旅を考える上では、これら3つの条件をより満たしてくれる時期と場所を考慮することが、よりオーロラ遭遇の可能性を高めてくれることになるのです。
オーロラが見える時の3つの条件
条件 その1
暗いこと
昼間に星が見えないことと同じように、発光現象であるオーロラは、”たとえ現れていた”としても、暗くなければ見ることはできません。当たり前のように思えますが、オーロラベルトである極地地方は高緯度であるため、夏の夜は白夜のように暗くならず、夏至に近くなるほど明るい時間帯は劇的に増えて行きます。そのため、オーロラ旅行に行く際の季節選びはとても大切です。
また、都市部などの人工の明かりが多いところでは光が邪魔するため、出現しているオーロラが弱い場合はあまり良く見ることができません。オーロラ旅行を計画する際は、街頭や建物の明かりがなるべく少ない鑑賞地を選ぶことが大切です。町の郊外にあるロッジなどに宿泊するプランが、最も理想的な鑑賞のスタイルです。
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8月24日、午後23:30頃に北緯66度33分の北極圏付近で撮影。この時間になってやっと夕暮れが訪れる。
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条件 その2
晴れていること
オーロラは、高度80kmから500kmほどの電離層と呼ばれる非常に高い場所に出現します。そのため、たとえオーロラが出現していたとしても、天気が悪ければ雲がオーロラを隠してしまうために見ることができません。せめてオーロラの見える夜空の方角だけでも、星が見えていることが必要なのです。
『寒い日はオーロラが出やすい。』という噂を聞いたことがありますか? 気温とオーロラ出現の確率には直接の因果関係はありませんが、実はまったく関係していないと言うわけでもありません。快晴の日は放射冷却により気温がグッと低くなりがちです。そのため、寒い日=快晴の日=良くオーロラが見える、という噂に繋がったのではないしょうか。
天気は”運”に左右されるものとはいえ、3日間の旅行期間で2日間晴れるのか3日間晴れ続けるのかでは、オーロラ遭遇の確率は劇的に違ってきます。オーロラ旅行を計画する際は、より天気の崩れにくい晴天率の高い場所を選ぶことが大切です。
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条件 その3
太陽活動が活発なこと
上の二つの条件を満たしているのであれば、あとはオーロラの出現を待つのみです。オーロラの出現と太陽面で起こる太陽活動には非常に密接な関係があります。オーロラの素である「太陽風」は太陽で生み出され、おおよそ2日から3日で地球に到達します。太陽で発生した太陽風のレベルが強いほど、強く広範囲に広がるオーロラが地球に出現するのです。
太陽風のレベルは「宇宙天気予報」などでも、おおよその予測が可能ですが、これも所詮は一つの要素でしかありません。オーロラがいつ目の前に現れるかは、神のみぞ知るということです。
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次は、オーロラを見るのに最も適した、季節と時間帯について考えます。
オーロラ鑑賞に適した季節と時間帯このページに記載されたすべての情報(テキスト、画像、イラストを含む)を無断で転用、コピー等をすることは禁止されています。掲載情報の使用をご希望の場合は、コンタクトページよりヤムナスカ・マウンテン・ツアーズまでご相談ください。