日照時間の短い冬季はオーロラ鑑賞に最適な季節です。しかし、極地地方の冬の気温は日本とは比べものになりません。じっと動かず夜空を見上げながらオーロラを待つというのは、想像以上に身体を冷え切らせるものです。オーロラ鑑賞というアクティビティーは、寒さとの戦いといっても過言ではありません。
冬の防寒具
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冬の寒さは日本の常識を超えている
せっかく素晴らしいオーロラが出ても、寒さで震えていたのでは全く楽しめません。防寒対策はオーロラ鑑賞での最重要項目の一つです。オーロラ鑑賞に最適なオーロラベルトの極地地方は緯度60度から70度と高緯度に位置しているため、日本と比べて日照時間は短く、平均気温も非常に低くなります。東京は緯度35度、北海道の北部に位置する稚内市でも緯度45度ほどですので、冬の環境の厳しさを想像できることでしょう。
カナダのオーロラ鑑賞都市は比較的に晴天率が高くメリットがありますが、その代償として平均気温は低くなります。最も寒さの厳しい季節である1月を例にすると、カナダ、ホワイトホースでの平均最低気温はマイナス19.2度にもなります。実際は湿気がないこともあり、見た目の数字ほど体感する温度は恐ろしいものではありませんが、厳しい寒さであることには間違いがありません。3月にもなると気温はだいぶマイルドに和らいでいきます。
ホワイトホース 冬の平均気温
月 平均最高気温(℃) 平均最低気温(℃) 12月 -8.5 -16.5 1月 -11.0 -19.2 2月 -7.7 -17.6 3月 -0.7 -11.9
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防寒対策は道具の質が命
経験のない人は、これだけ寒い環境で本当にオーロラ鑑賞が可能なのかと疑問に思うことでしょう。しかし、これだけの環境でも町があり、人々が生活していることを考えてみてください。上記のホワイトホースは、2万5千人以上の人々が生活しています。もちろん寒さへの慣れもありますが、しっかりした装備と準備があれば、これだけの数の人が十分に生活ができる気温なのです。しかし、オーロラ鑑賞はじっと動かないでいるということを忘れてはなりません。彼らが生活で使用している防寒具よりも、さらにレベルの高いものが必要となるのです。
オーロラ鑑賞での寒さ対策を考える上で最も大切なのは「衣服の質」であり、マイナス20度を下回る環境下でも通用する装備が必要となります。
装備をしっかりしていれば何も心配はいらない。
服装のサンプル
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レイヤリングを極める
防寒対策の服装とは、ただ沢山重ね着すれば良いというものではありません。理想的なのは適度な枚数が効果的に重ね着されることであり、身体から出る熱をどれだけ閉じ込めることが出来るかがポイントになります。沢山着込んでしまうと血行が悪くなるばかりでなく、衣服内が蒸れることで水分が蒸発し、その際に身体の熱が奪わて冷えていきます。
衣服調整や重ね着のことを「レイヤリング」と言いますが、快適なレイヤリング方法とは、衣服と身体の間に適度に空気の層(レイヤー)が入り込む隙間を作ることです。空気の層が保温効果を生み出すため、気温の低い環境でも快適に暖かく過ごすことが出来るのです。
頭部厚手のニット帽
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首元 / 顔ネックウォーマー、マフラー素肌が出る面積をなるべく少なくすることは非常に大切です。首元の保護はもちろんですが、露出面の多い顔の中でも特に目元や頰を隠せるようにしましょう。風の強い日は長時間肌を露出させないように、頬や鼻の上まで覆い隠せるネックウォーマーが便利です。口元を覆い隠すと吐息が氷結してしまうこともあるので、適度に調節するように注意しましょう。 |
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アウターレイヤー厚手の防寒ジャケット
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サブ・アウターレイヤーダウンセーター厚手のアウターを使うほどでもない日中の行動時を考えて、もう一つのアウターを用意しておくと非常に便利です。また、厚手のアウターでも厳しいほどの寒さの時に、ミドルレイヤーとアウターレイヤーの間に重ね着るできるような薄でのダウンセーターが一つあると非常に重宝します。持ち運び時も小さくなるのでオススメのアイテムの一つです。 |
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ミドルレイヤーフリースジャケット、セーターミドルレイヤーは保温性の確保が目的ですが、通気性や速乾性も大切なポイントになります。化繊のフリースや裏地が起毛しているウールの素材などが一般的ですが、保温性が高く、ある程度厚みがあるものを選ぶと良いでしょう。厚みの異なる2種類のタイプを用意しておくと、日中のアクティビティーなどでも重宝するので便利です。 |
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ベースレイヤーロングスリーブシャツ、肌着素早く汗を吸水拡散し、肌をドライに保つことが目的のため、材質選びは非常に大切です。日中のアクティビティー用には薄め、オーロラ鑑賞時は厚めが必要ですが、その中間ぐらいのものも含めて3点ほど用意するのが理想的です。素肌と衣服の間に余分な空気が入ると保温効果が落ちるため、身体にぴったりとフィットする伸縮性のあるタイプを選ぶことが大切です。化繊のものが一般的ですが、透湿性と保温性に優れるメリノウールは非常にオススメです。 |
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アウターパンツ厚手の防寒パンツ
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下半身用のベースレイヤータイツ、スパッツなどの肌着上半身と同様に速乾性と透湿性を備え、保温力を備えた材質を選ぶ必要があります。厚手と薄手の2種類があると非常に重宝します。身体にぴったりとフィットする伸縮性のあるタイプを選びましょう。 |
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アウターグローブ厚手の手袋
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インナーグローブ薄手の手袋アウターグローブは厚手でゴワゴワしているため、カメラ操作や細かい作業が必要な時には不向きです。そのため、アウターグローブの下に装着する薄手の手袋があると、いろいろな場面で非常に重宝します。100円ショップなどで売られているものでも十分です。 |
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ウインターブーツ極地用防寒ブーツ
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ソックス厚手の靴下スキーや冬山登山用の保温効果のあるものを選びましょう。特に爪先は冷えやすく、靴下の重ね履きをする場合は、圧迫により血流が悪くなるので注意が必要です。ベースレイヤーと同じように材質選びは大切であり、綿のものよりも透湿速乾性能の高い化繊やメリノウールのものがオススメです。 |
秋の服装
身体に優しい秋の気温
高緯度の極地地方は秋も早く訪れるため、ユーコン準州では8月末から9月中旬ぐらいがシーズンとなります。気温はとてもマイルドであり、極地地方とは言えどもそれほど神経質になる必要はありません。9月中旬を過ぎると気温は氷点下になることもありますので、日本の真冬並みの寒さをイメージして対策をしましょう。薄手のニット帽、ダウンジャケット、フリースの手袋があれば十分です。ベースレイヤーとして暖かく速乾性能のある肌着の上下を用意しておけば安心です。ブーツは履きなれた歩きやすいものであれば問題ないですが、夜間、足元の不安定なところで動き回ることを考えると、靴底のしっかりしたものを選ぶと良いでしょう。寒さ対策としてブーツ用のホッカイロを用意しておくのもオススメです。
秋の季節は日中と夜間で寒暖の差が大きく、日中は20度以上の気温になる日もあるため、暑い日も想定して服装も合わせて準備しておくと、より快適に過ごすことができます。Tシャツや薄手のロングスリーブなどを荷物に含めておきましょう。
ホワイトホース 秋の平均気温
月 平均最高気温(℃) 平均最低気温(℃) 8月 18.5 6.7 9月 12.1 -2.1 秋のオーロラ鑑賞時は日本の真冬を想定した装備があれば十分。
9月でも日中は昼寝したくなるほど暖かい日もある。
ヤムナスカ・マウンテン・ツアーズ 本山直人 |
寒さで起こり得るトラブル
マイナス20度を下回る世界では、様々なトラブルに見舞われることがありますが、一番注意する必要があるのは「凍傷」です。なるべく素肌は露出させないようにしましょう。目元や頰などは気づかないうちに低レベルの凍傷が進んでいる時もあります。風のある日は特に注意が必要です。
「低温やけど」も危険なものの一つです。ドアノブやカメラの三脚など、キンキンに冷え切った金属を素手で触らないように注意しましょう。気温の低い日は金属のピアスなどもなるべく外した方が良いです。また、プラスチック製品は凍結して破損しやすくなるため、メガネのフレームの材質にも注意したいところです。メガネよりもコンタクトレンズの方が安心感があります。ただし、非常に乾燥しているため、目薬は手元に用意しておき頻繁に目のケアをした方が良いでしょう。
次は、実際のオーロラ鑑賞で役に立つTIPSを解説します。 オーロラ鑑賞のテクニック
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