どんなに高性能のカメラを使っても、写真がブレてしまっては意味がありません。長時間露光が必要なオーロラ撮影において、三脚は必須のアイテムと言えます。しかし、三脚のタイプは様々で、ただ固定できれば良いというわけでもありません。三脚を利用する背景をしっかりと理解し、適切な三脚を選びましょう。
三脚の必要性
手持ち撮影には限界がある
オーロラだけでなく、夜景や星空などの暗い中での撮影では、カメラがわずかな弱い光を捉える必要があるため、長時間シャッターを開いていなくてはなりません。では、息を止めて動かないようにすれば、三脚はなくても大丈夫でしょうか? 試しに1秒間だけでも動かないように撮影して画像を見てみましょう。デジカメの小さなディスプレイで綺麗に撮れている様に見えたとしても、パソコンの大きな画面で見ればブレてボヤけていることに気づくはずです。手持ちで撮影した場合、おおよそ1/60秒よりシャッタースピードが遅くなると、写真はブレてしまうと言われています。オーロラの撮影においては、シャッタースピードが少なくても10秒ほど必要となり、長いときは30秒ほどまで遅くする時もあります。また、オーロラ撮影は寒冷地で行われることを忘れてはなりません。緯度60度から70度の極地では、冬季にマイナス20度を下回ることも珍しくはなく、このような環境下で安全に撮影を楽しむためにも三脚は役に立ちます。三脚にカメラをセットしていれば、冷たくなったカメラを持っている必要がなく、より防寒に専念できるというわけです。
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オーロラ撮影では三脚が必須。
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三脚があれば、寒い時でも防寒に専念できる。
三脚の選び方
三脚選びは使用する場面を想定すること
三脚なんて固定できれば良いだけだろうと思う人もいるかも知れませんが、これは大きな間違いと言えます。三脚の種類というのは非常に多くあり、適当に選んだ三脚が肝心の撮影場面で役に立たなかったというのは良く聞く話です。せっかくのオーロラ旅行で後悔しないためにも、三脚は適切なものを選びましょう。三脚を選ぶ際には最低限押さえるべき重要なポイントが3つあり、それは「重量のバランス」「脚の構造」「材質」です。ここでは、それぞれの項目についてオーロラ撮影の場面を想定して考えてみましょう。
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重量のバランス
カメラの重さに合った三脚を選ぶべこと
三脚を選ぶ基準においてもっと大切なことは、使用するカメラの重さを支えることができる三脚を選ぶことです。一言で言えば、重いカメラを支えるためには重い三脚が必要ということになります。重量のバランスが悪いと三脚がカメラを支えきれず、撮影中に微妙に動いてしまいブレが生じます。オーロラ撮影では10秒から15秒ほどシャッターを開けていることが多いため、重量のバランスは特に大切になってきます。
では、どのように重量のバランスを取れば良いのでしょうか。三脚には「耐荷重」という数値が設定されています。これは三脚が支えることのできる重さであり、例えば耐荷重が1kgの三脚であれば、重さ1kgのカメラまで支えることができることを意味します。しかし、実はここには大きな落とし穴があります。 オーロラ撮影は野外の寒冷地で行うことを考えなくてなりません。極地では強い風が吹くこともあれば、足場の悪い雪面に三脚を立てて使うことも多々あるため、実際の耐荷重よりも大きな重量が支えられるものを選ぶ必要があります。カメラの重量にプラス1kgほどの耐荷重が目安となり、カメラとレンズの重量の合計が1.5kgであれば、耐荷重が2.5kgぐらいの三脚を選ぶと良いでしょう。
使用する三脚は、カメラとの重量のバランスを考慮する。
カメラ固定部の構造も大切。固定部の作りが悪いと、重量のあるカメラが徐々に傾いていくことが多い。
脚の構造
脚が長いほど良いという訳ではない
オーロラ撮影を行う冬季の寒冷地では、地面に雪があることを想定しなくてはなりません。脚を伸ばした時の高さは、最低でも60cmほどは欲しいところです。しかし、高ければ高いほど良いという訳ではありません。高くなるほど一番下(伸ばした先)の脚は細くなり、少なからず安定性能も弱くなっていきます。三脚は3段組と4段組のものがありますが、重量のあるカメラで使用する場合は、3段組のほうがオススメです。三脚によっては、例えば花の写真などの低いものを撮影する用に、可能な限り低く設定できる機能を備えているものもありますが、上空に向けた撮影がメインとなるオーロラ撮影では、この部分の機能性は無視しても良いでしょう。
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脚のロック方式
脚のロック方式とは、三脚の脚を伸ばした時に脚を固定する仕組みであり、代表的なものは「ナット式」と「レバー式」の2種類があります。ナット式は、脚をくるくると回転させて締め付けるタイプであり、一方、レバー式は、ワンタッチでパチッと固定するタイプとなります。
実際のところ、それぞれに一長一短があるため、自分が使いやすい方を選んだ方が良いのですが、オーロラ撮影を考えると、レバー式の方がオススメです。寒冷地では厚手のグローブを装着して撮影を行うことが多いため、ナット式では締め付けが甘くなりがちです。ワンタッチで締め付けるレバー式の方が、簡単に脚を固定できることでしょう。
材質
オススメは軽くて丈夫なカーボン製
三脚の素材に使用される材質は、大きく分けて「カーボン製」と「アルミ製」があります。カーボン製は重量が軽く、剛性(振動吸収)にも優れていますが、価格帯は高くなります。一方、アルミ製はカーボン製よりも重量があり、剛性で劣りますが、価格はお手頃となります。
オススメは軽くて丈夫なカーボン製となりますが、アルミ製でも悪い訳ではありません。予算と相談しながら選ぶと良いでしょう。この二つの素材以外だと「金属製」もありますが、寒冷地での使用を想定した場合、金属製は素手で触ると非常に危険であるためオススメしません。その他、コンデジなどの軽量なカメラ用としてプラスチック製の三脚もありますが、プラスチックは極寒の気温になると破損しやすく、安定感も低いため、こちらもオススメはできません。
三脚にあると便利な機能
クイックシュー
カメラの着脱を手軽に行う
クイックシューはオーロラ撮影では非常に重宝するアイテムです。通常、カメラと三脚を固定する際は、カメラを三脚の「雲台」に乗せてネジで固定します。クイックシューはカメラ側と三脚側にあらかじめ着脱式のパーツを固定しておくものであり、両者をワンタッチレバーで着脱して使うことができるため、毎回ネジを回して着脱する必要がなくなります。寒冷地では防寒具として厚い手袋を着用していることが多いため、毎回ネジで取りはずすのは非常に億劫に感じます。オーロラの兆候がない時など、しばらく待機して撮影をしていない場合も、三脚を撮影地に残して手軽にカメラを着脱できるので非常に便利です。
自由雲台
突然現れるオーロラに素早く対応する
一般的に普及している雲台は、「3WAY雲台」と言う、2本のレバーを使用して上下左右にカメラの向きをコントロールするものですが、「自由雲台」は、その名の通り自由な方向に素早くカメラの向きを調整できるものです。オーロラは突然に予測もしない場所に現れることも多くあるため、操作性が高く、素早く被写体にカメラを向けることができる自由雲台は、非常にオススメのアイテムです。頭上にオーロラが現れた時など、縦構図に素早く切り替えたい時も重宝します。
レリーズ
マイナス30度では折れてしまうこともある
せっかくブレないように三脚を使用しても、カメラ本体のシャッターを押す時にボディーが微妙に揺れてブレてしまっては意味がありません。レリーズとはカメラ本体のシャッターボタンを押す代わりに、離れた場所からシャッターを切るためのアイテムです。
レリーズはケーブルで接続するタイプと、リモコンタイプがありますが、寒冷地での使用では何かと問題が起きやすいため、選択には注意が必要です。マイナス30度まで気温が下がると、安価なサードパーティー製のものでは凍って動かないこともあり、最悪は折れてしまうこともあります。あまりにも気温が低い時は、カメラ本体の2秒セルフタイマーなどを使用すると良いでしょう。最近のカメラは wifi を備えており、スマホ用の専用アプリを使って、レリーズとして使える機能もありますが、スマホはバッテリーの持ちが悪いので寒冷地での使用はオススメしません。
次ページは、実際の撮影現場を想定した、具体的な撮影の手順を解説します。
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