現在は様々なオーロラ予報サイトがありますが、そもそもオーロラの予報とは可能なのものなのでしょうか? 時には天気予報も有益な情報となりますが、実際のオーロラ鑑賞では予報はあくまでも予報であると知ることが大切です。ここではオーロラ予報のメカニズムを見るとともに、オーロラの遭遇確率について考えてみましょう。
オーロラ予報
どのようにオーロラを予報するのか?
オーロラが発生する条件の一つとして、太陽活動が大きく関係していることが知られています。そして、これら太陽活動のデータから地球に起こる環境の変化を予測し、それらを元にオーロラの活動を予測することが、現在、最も一般的に行われているオーロラ予報の方法となります。
オーロラ発生の仕組みを少しシンプルに説明してみましょう。太陽活動により発生した「太陽風」が地球に届き、これらのエネルギーが地球の大気と衝突して起こる発光現象がオーロラです。太陽活動の規模により太陽風エネルギーの規模も変わるため、これによりオーロラの規模も変わることになります。一般的には、太陽風が発生してから地球に届くまでは2日から3日ほどかかると言われています。そのため、太陽でいつ、どのレベルの太陽活動が起きたのかを知ることができれば、その後に地球で起こりえるオーロラの活動を予測できることになります。
今日までに観測衛星の技術は飛躍的に発達し、現在は宇宙からたくさんのデータを取得することができるようになりました。しかし、オーロラ発生のメカニズムにおいては、まだ完全に解明されていない部分も多くあるため、専門家であってもオーロラ発生の正確な予測は難しいものとされています。オーロラ予報の研究はまさに現在進行形の分野なのです。
予報を難しくする大きな要因
太陽で発生し、地球に到達した太陽風エネルギーが、そのままオーロラの発生に繋がるのであれば、予報はそれほど難しいものではありません。しかし、実際はその数値だけでオーロラの規模と発生のタイミングを予測することはできないのです。
地球には磁場のバリアがあるため、地球に届いた太陽風はそのまま大気圏に侵入することができません。地球の夜側から磁気圏の侵入に成功した太陽風エネルギーは、一旦、地球の夜側のエリアに溜まり、そこから地球の大気圏に送られてきます。しかし、これらの溜まったエネルギーが、いつ、どのぐらいの大きさで地球の大気圏に入ってくるのか、この部分にはまだまだ不明な点が多くあるのです。オーロラのピークが一晩のうちのどのタイミングで来るのか分からないのもこのためです。
太陽活動の観測からだけでは、オーロラがいつ起こるかの予測には繋がらない。
予報サイトの活用
世の中には数多くのオーロラ予報サイトがあり、最近では非常に専門的な研究機関のデータまでも見ることができるようになりました。一般的に利用されている多くのオーロラ予報サイトは、アメリカにある『SWPC=Space Weather Prediction Center(宇宙予報センター)』のデータを活用しており、その日のオーロラが観測できる期待値、確率などを独自の見せ方で表現しています。
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オーロラ予報のサイト
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Aurora Forecast オーロラ・フォアキャスト
広く見られているサイトであり、10段階の数値でその日のオーロラ活動レベルをチェックすることができます。英語のサイトですが直感的に見やすいデザインのため、読み取るのは難しくありません。向こう3日間の予報もカバーしています。
この予報サイトを見る
ヤムナスカ・マウンテン・ツアーズ 堀口慎太郎 |
上級者向け「宇宙天気予報」の活用
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上記で紹介したオーロラ予報のサイトは比較的に誰でも見やすく読み取れるように作られているため、その分、宇宙天気データの数値を広くカバーはしていません。私たちヤムナスカのオーロラツアーを担当するガイドは、「宇宙天気予報」が取り扱う専門的なデータを活用し、もっと掘り下げたオーロラ予報を行っています。
情報通信研究機構 (NICT) 傘下で設立された宇宙天気情報センターでは、非常に広範囲の宇宙天気データを扱っており、中でも「宇宙天気ニュース」はオーロラ予報に役立つ有益な情報が満載です。太陽活動の種類や発生した現象それぞれの個別データの活用方法など、ページの詳しい紹介はオーロラの知識『宇宙天気予報とオーロラの関係』に記載しています。是非ご覧ください!
オーロラの見える確率
3泊の滞在での遭遇確率は90%以上と言われるが、果たしてその真相とは?
写真やテレビでは素晴らしいオーロラのイメージが良く使われることで、いつも凄いオーロラが出ると思われがちですが、オーロラとは自然現象であるということを忘れてはなりません。例えば豪雪の雪国に訪れたとしても、猛吹雪に見舞われるのは稀なことであり、それどころか雪の降らない日も当然あります。そして、オーロラベルトに訪れた時も同様のことは言えるのです。オーロラとは太陽活動などの様々な宇宙物理に起因する壮大な現象です。地球内のある地域に特定した天気予報ですら外れることがあるのが自然現象です。それを考えれば、宇宙規模のオーロラを予測するのがいかに難しいかは想像できることでしょう。
たまにオーロラのツアーカタログなどで遭遇確率を記述しているものもありますが、実際のところはどうなのでしょうか? 良くカナダのホワイトホースやイエローナイフでは、『3泊したら90%以上の確率で見れる。』と言われます。私たちもホワイトホースを拠点にしていますが、たしかに3泊滞在すれば少なくとも1回は見れるというのは決して大げさではありません。そして、遭遇する確率はさらにもっと高くなることも十分に考えらます。
オーロラの遭遇確率とは、まず強いレベルのオーロラが起きるか起き無いかという太陽活動に起因する部分と、見えるか見え無いかという天気に起因する部分があります。自分がオーロラ旅行を計画した時に運が良く太陽活動が活発であり、さらに毎日のように晴れ続けてくれたならば、3戦全勝も夢ではありません。やはりオーロラとは「運」によるところが大きく、ややギャンブル性が高いと言えるかもしれません。
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決して強いオーロラでは無くても、オーロラに出会えたことに感謝。
宿泊地の上空に強いオーロラが出現。初日の夜からこのようなオーロラに出会えれば幸せだ。
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人生観を変えるほどのオーロラ爆発体験
3分の1という確率を聞いて、低いと思うか高いと思うかは人ぞれぞれだと思います。当然のことですが、3日のうち2日間見えることもあれば、3日間連日見え続けることもあります。しかし、ただ見えるといってもそれがどれほどのレベルのオーロラかという話とは別であり、「オーロラ爆発」のような究極のオーロラ体験ともなると、決して頻繁に出会えるものではありません。しかし、オーロラ爆発は何度もトライしても一度は見る価値のある本当に素晴らしい天体ショーであり、心が震えるほどの感動体験であるということは断言できます。何度もオーロラ旅行をする人はたくさんいますが、1度でもオーロラ爆発を見たことのある人であれば、『またあの素晴らしいオーロラに出会いたい! あの感動を味わいたい!』そんな気持ちになるのも良くわかることでしょう。
オーロラ爆発が観測されているオーロラ鑑賞地に行けば、たとえ確率は低くても見れる可能性は十分にあるのです。人生観を変えるほどの究極の自然体験。そんな神秘の現象に遭遇するための「宝くじ」を買うつもりで、自分の運を試してみましょう。
究極のオーロラ体験であるオーロラ爆発。初めてのオーロラ旅行で見ることができたら、非常にラッキーである。
オーロラ予報画像の読み取り方
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オーバルの色は確率を表している
SWPC(宇宙予報センター)によるオーロラオーバルのリアルタイム画像は、上記で紹介したオーロラ予報サイトも含め、今や世界中のありとあらゆるオーロラ関連サイトで利用されています。オーロラオーバルの形状がリアルタイムで動いていくため、まさに今起きている実際のオーロラの状況を表していると勘違いされがちなのですが、これは様々な宇宙天気データにより作られたシミュレーション画像であり、あくまでもその場所で見れる「確率」を表しているものです。
【画像A】は2017年2月1日、21:50 UTCのものですが、この時、北欧やアイスランドでは50%から70%ほどの確率で見れる可能性があることを意味しています。この数値は天気予報の降水確率と同じように、あくまでも特定のエリアでの「遭遇確率」を意味しています。数値はその時のオーロラの「強さレベル」に比例して高まりますが、実際はそれぞれの場所の天気や様々な要因に左右されて、遭遇の確率は大きく変動します。また、グラフが真っ赤になる90%の状態の場合、まるでそのエリアでオーロラ爆発が出ているかのように思われがちですが、そうではありません。そのような日は強いオーロラの期待値が高い、と考えるに止めておく方が良いでしょう。
【画像A】2017年2月1日、21:50 UTC の状況。この時に北欧やアイスランドでオーロラが見える確率を表している。
天気予報の活用
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天気が悪いとオーロラは見ることができない
オーロラ爆発の時のように、頭上から降り注ぐような素晴らしいオーロラに出会えたときは、まるですぐ近くの上空で発生しているかのように錯覚する時もあります。しかし、実際のオーロラは想像以上に高いところで発生しているのです。
オーロラは高度80kmから500kmという、雲や飛行機が飛ぶよりも遥かに高い場所で発生します。そのため、どんなに素晴らしいオーロラが地球上に出現している日であったとしても、天気が悪く夜空に星が見えていなければ、オーロラは雲に隠れて見ることができません。オーロラ鑑賞の成功率は、その日の天候に大きく左右されるため、鑑賞地はなるべく晴天率の高い場所を選ぶことが大切なのです。
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極地の天気予報は当てにならない?
オーロラ旅行の出発日が近づいてくると、目的地の天気予報が気になるもです。たしかに、天気予報で天候をチェックすることも大切ですが、その予報の精度を考える必要があります。普段私たちは、日本で行われている天気予報があまりにも正確なために、世界の天気予報も同じように精度の高いものと考えがちです。しかし、えてしてオーロラ鑑賞都市である極地の天気予報は精度が低く、特に週間天気予報ともなると後半の方はほとんど当てにできません。その理由の一つは、土地面積に対して観測所の数が少ないためです。都市から離れた郊外のロッジともなると観測ポイントから50kmから100km以上も離れていることも多くあり、都市部の予報とはまったく逆の天気であるということも珍しくはありません。
また、これらの地域で天気予報が外れる最も大きな要因の一つは、そのエリアの気候帯にあります。オーロラ観賞が可能な多くのエリアは「亜寒帯」という気候帯に属しており、温帯の日本とはその性質が大きく異なります。中でもカナダやアラスカなどの比較的乾燥した地域では天気の移り変わりが非常に激しいため、天気予報をさらに難しいものとしているのです。日本では一度天気が崩れるとなかなか回復しないため、ついついそのイメージで考えてしまいがちですが、極地の天気は変わりやすいということを忘れてはなりません。
諦めたらそこで終わりです
オーロラ鑑賞地に到着していざ出陣!という時に天気が悪く、ましてや雪や雨が降っているともなると、非常にがっかりするものです。しかし、その鑑賞地が天候の移り変わりの激しい地域であれば、そこまで落胆する必要はないのです。例えばカナダのユーコンなどでは、1、2時間も経過すると悪天候が嘘だったかのように、綺麗な星空になることも珍しくはありません。車で30分ほど移動しただけでも、天気がガラリと変わることもあります。天候が悪いため部屋で待機している間にうっかり寝てしまい、オーロラを見逃すというケースは良くある話です。
確かに最初から天気が悪いと気持ちも盛り上がらず、今日は無理かもと諦めてしまいがちです。しかし、夜は長く、天気が変わりやすいことを忘れてはなりません。もし、部屋で休む場合は、うっかり朝まで寝てしまわないように1、2時間後に合わせて目覚ましをかけておくのが大切です。体力を温存しながらも気長に諦めずに待っていれば、素敵なプレゼントが天空から舞い降りてくれるかもしれません。
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諦めモードに入っていると、部屋で待機しているつもりが、ついうっかり寝てしまうこともある。
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雲が薄くなり、オーロラが見え始めた時の写真。カナダでは天気が突然、急激に変わることも珍しくは無い。
次ページは、オーロラを見逃さないための、最も理想的な旅行のスタイルについて考えます。
理想的なオーロラ旅行のスタイルこのページに記載されたすべての情報(テキスト、画像、イラストを含む)を無断で転用、コピー等をすることは禁止されています。掲載情報の使用をご希望の場合は、コンタクトページよりヤムナスカ・マウンテン・ツアーズまでご相談ください。