オーロラを撮影するためには、シャッタースピードやISO感度を調整しながら、場面に合わせた適切なカメラ設定の調整が必要になります。一眼レフでのマニュアル撮影方法を中心に、オーロラ鑑賞地で実際に撮影をする手順を見ていきましょう。ここで紹介する手順は、マニュアルモード搭載のコンデジにも応用が可能です。
カメラの初期設定
オーロラ撮影の基本となる初期設定をする
オーロラはその時その時で光の強さや規模も異なるため、それぞれの場面に合わせて「シャッタースピード」や「ISO感度」などのカメラ設定を調整する必要があります。そのため、オーロラ撮影においては、いつでも当てはまる絶対に正しい設定方法というものは存在せず、実際には試し撮りを繰り返しながら、その場面に合わせたベストな設定に変更していく必要があるのです。しかし、夜間の寒冷地での撮影において、すべて一から設定していくのは得策ではありません。オーロラ撮影では、まず試すべき基本となる初期設定があるため、撮影の前にしっかりとカメラの設定を済ませておきましょう。
撮影モードの「マニュアルモード」を使用した、どのカメラにも当てはまる一般的な撮影方法を考えてみましょう。カメラをマニュアルモードに変更し、「シャッタースピード」「F値(絞り)」「ISO感度」の初期設定をします。シャッタースピードは、10秒が基本値と考えてみましょう。オーロラの光が明らかに強い場合、もっと速いシャッタースピードでも十分に可能ですが、オーロラが出ているかどうかの出始めの兆候を確認する意味でも10秒というのは目安となります。続いてF値(絞り)は最も明るい設定(開放値)に調整します。最後のISO感度はカメラの性能によりノイズの少ないレベルに違いがあるため一概には言えませんが、ISO1600ぐらいから試してみると良いでしょう。
シャッタースピード 10秒 絞り(F値) 可能な限り最も明るい開放値(数値の小さい値) ISO感度 ISO1600 オーロラ撮影の一般的な初期設定
ISO 400 ISO 800 ISO 1600 F1.4 10秒 4秒 2秒 F2.0 13秒 6秒 4秒 F2.8 15秒 8秒 6秒 F3.5 20秒 10秒 8秒 F4.0 30秒 15秒 10秒 F5.6 45秒 20秒 15秒 設定の目安となる対応表
マニュアルモード(M)に切り替える。
カメラモニターで設定を確認する。
オーロラ撮影にあると便利な道具
ヘッドライト
携帯電話のライト機能やペンライトでも代用は効きますが、やはり両手が開放されるヘッドライトが一番重宝します。新しく購入するならば、赤色LEDタイプに切り替えられるタイプがオススメです。赤色灯は周囲に光が広がらないため、周りで撮影する人にも迷惑をかける心配が少ないのがメリットです。あくまでも一人だけで撮影する場面であれば、明るく見やすい白色灯も便利ですが、人間の目は白色灯などの強い光を見ると瞳孔が収縮するため、消灯後、目が慣れるのに少し時間がかかることがマイナス要素です。
薄手の手袋
レンタル防寒具のセットに含まれるグローブは、厚手のミトンタイプが一般的です。ミトンタイプは防寒具としては非常に優秀ですが、その厚みのため細かい作業には不向きです。そのため、厚手のグローブの下にはめられるような薄手の手袋があると重宝します。マイナス20度以下になると寒さが顕著になり、三脚などに金属部分がある場合はキンキンに冷え切るため、これらに素手で触れると低温ヤケドの危険もあります。
星空のピント合わせ
マニュアル・フォーカスの設定
-
マニュアル・フォーカスの切り替え
カメラはフォーカス(ピント合わせ)の基本設定が「オート・フォーカス」のため、オーロラ撮影では「マニュアル・フォーカス」へ切り替えます。これを怠りオート・フォーカスのままで夜間の撮影に臨むといつまでもピントが合わず、大事な時にシャッターが切れないということになりかねません。一眼レフの場合はレンズ側にフォーカスの切り替えスイッチが付いていますが、さらにボディー側にもう一つ付いている機種もあります。その場合は両方の設定を切り替えましょう。コンデジの場合はメニューからフォーカスの設定を確認します。
手ブレ補正機能をOFFにする
手持ち撮影で活躍する手ブレ補正機能ですが、三脚を使用する撮影の場合、この機能が誤作動してブレを増幅させる事が稀にあります。そのため、多くのカメラでは三脚使用時の手ブレ補正機能はOFFを推奨しています。一眼レフの場合は手ブレ補正機能ON/OFFのスイッチがレンズ側に付いています。コンデジの場合は設定メニューを確認してください。
星空にピントを合わせる3つの方法
ピント合わせの方法 1
ライブビューでピントを合わせる
オーロラ撮影において最も綺麗にピントを合わせる方法は、撮影時に星空を使ってピントを合わせることです。しかし、暗い中でカメラの光学ファイダーを使い、肉眼で小さな星にピントを合わせるのは非常に難しく、上級者でも大変な作業です。そこで役に立つオススメの方法が、多くのメーカーのカメラに搭載されている「ライブビュー」などの電子ファインダーを使用する方法です。
ライブビューでピントを合わせるには、まず一番明るい星を探し、フォーカスポントをその星に合わせます。その後、その星を限界まで拡大表示し、フォーカス(ピント)リングを動かしてみます。星が大きくなったり小さくなったりするはずですので、星が一番小さくなる場所に合わせます。これで星空に正確にピントが合い、オーロラ撮影のピントが整いました。調整後は試し撮りをし、撮影した星の写真を拡大してピントを確認しましょう。
カメラによりライブビューの性能が低い場合もあり、また、そもそもこの機能が付いていないカメラもあります。その場合は、以下に説明する別の方法を試してください。
ピントを合わせたらテープで固定
きちっとピントを合わせたとしても、油断してレンズに触れてしまい、せっかく合わせたピントがずれてしまっては元も子もありません。そんな時に役に立つのが、粘着性が弱く、着脱が容易なマスキングテープです。テープをフォーカスリングに貼り、リングの回転を固定しておくと安心です。
-
ピント合わせの方法 2
レンズのフォーカスリングを「無限遠」に合わせる
星空でピントを合わせる方法が一番確実とはいえ、いつも綺麗に星が見えるわけではなく、あらかじめ室内で設定したい時もあるはずです。そんな時はレンズを「無限遠」マークに合わせましょう。無限遠とは最も遠くにピントがあった状態のことです。コンデジの場合は、山マークなどで表している場合もあります。無限遠の位置はレンズにより微妙に異なっているため、自分のレンズの正確な位置を知っておくことが必要です。明るいうちに遠望の風景を使い、オート・フォーカスで無限遠にピントを合わせたら、マスキングテープなどを使い無限遠の位置に印をつけておくのも有効な方法です。
フォーカスリングを一番端まで回した状態が無限遠と思われがちですが、実際はフォーカスリングを端から少し手前に動かしたところに設定されていることが多くあり、このことはオート・フォーカスで無限遠のものにピントを当ててみると確認ができるはずです。レンズに無限遠のマークがあるのだから、最初からそこに合わせれば良さそうですが、実際は手動でマークに合わせても、正確に設定されるわけではありません。これはレンズの熱により、ピント位置が微妙に変化することが理由であり、フォーカスリングを回しきった時に無限遠にならないのは、この微妙なズレに対応するためなのです。
ピント合わせの方法 3
明るいうちに「無限遠」に固定してしまう
まだ明るいうちに、オート・フォーカスで遠くの風景にピントを当て、あらかじめ「無限遠」にピントを合わせてしまうのも一つの方法です。実際は、日中と夜間で気温も異なるため、時間帯により無限遠の位置に多少の誤差が生まれますが、それほど気になるレベルではないでしょう。一度、無限遠に合わせたら、その場所でピントの位置がずれないようにマスキングテープなどでフォーカスリングを固定してしまいます。もちろん、オーロラが出るまでそのレンズではオート・フォーカスが使用できなくなるのは言うまでもありません。
テスト撮影
実際に機材を装着してテストする
三脚を立てて実際に撮影をしてみましょう。ブレ防止にレリーズやリモートコントロールがあると重宝します。実際に撮影をしてみれば分かりますが、初めから狙ったような色でオーロラを撮影するのは難しいはずです。オーロラは生き物であり、その時その時により光の強さも大きさも異なります。オーロラが弱く、薄く写っているならば、もっとISO感度を上げるか、シャッタースピードを遅くする必要があります。逆にオーロラが強い日であれば、可能な限りISO感度を下げたり、シャッタースピードを速くして写真のクオリティーを高めます。運良くオーロラ爆発に出会えれば、速いシャッタースピードでもカーテンのように揺れ動く姿を捉えることができることでしょう。
ノイズリダクションを入れるかどうか?
高感度ISOでの撮影が必要なオーロラ撮影では、撮影後にノイズを除去する「ノイズリダクション機能」も有効な場合がありますが、基本設定としては「OFF」にしておくことをオススメします。その一番の理由は、ノイズリダクションでの撮影は、撮影後の書き込みに長い時間がかかるためです。多くの場合、シャッタースピードと同じぐらいの書き込み時間が必要となり、15秒のシャッターで撮影していたら、カメラが次の撮影までに30秒を要するということになります。オーロラが激しく動いていたり、状況が刻一刻と変化している時は、書き込み時間が非常にストレスになることでしょう。
バルブ撮影の利用方法
バルブ撮影とはシャッターボタンを押している間、シャッターが開き続ける機能のことです。シャッタースピードの設定は「B」や「BULB」などで表示されます。この機能は流れる星空撮影などの30秒以上シャッターを開けたい場合に使用されることが多いのですが、オーロラの試し撮りにも有効となります。ロック式のレリーズを使用し、自分で秒数をカウントしながら試し撮りを何度かしてみることで、適切なシャッタースピードを見つけやすくなります。毎回、設定画面でシャッタースピードを変更するよりは簡単な方法と言えるでしょう。
ヤムナスカ・マウンテン・ツアーズ 堀口慎太郎 |
オーロラ撮影はトライ・アンド・エラー!
私たちヤムナスカのオーロラガイドは皆がカメラ好きでして、全員が一眼レフを所有しています。ツアー中はお客様の案内を優先するため、撮影に没頭することはできませんが、休日に良いオーロラが出そうな日は一晩をかけて撮影に打ち込む日もあるんですよ。
オーロラの撮影は難しく、初めから綺麗に撮れる人はいません。素晴らしいオーロラに出会えたら、失敗覚悟で色々な設定を試しながら撮影してみましょう。私たちは一眼レフだけでなく、様々なタイプのコンデジでの撮影経験も豊富です。『私のこのカメラでは無理かな...』と思う方でも、一度私たちに相談ください。一見無理そうなカメラでも、実はそれなりに撮れる時も多いのですよ。
次ページは、オーロラ写真の理想的な構図について、サンプルを見ながら考えます。
オーロラ写真の絵作りと構図このページに記載されたすべての情報(テキスト、画像、イラストを含む)を無断で転用、コピー等をすることは禁止されています。掲載情報の使用をご希望の場合は、コンタクトページよりヤムナスカ・マウンテン・ツアーズまでご相談ください。