オーロラ写真はただ写すだけでも非常に嬉しいものですが、せっかくですから作品としてより完成度を高めることも考えてみましょう。周辺の環境を考え、山や丘、木や森などを上手く取り入れながら、撮影場所ならではの個性を出すのがテクニックです。自分だけの作品に仕上げるための絵作りと構図のアイデアを考えてみましょう。
撮影地のロケハン
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撮影場所の下調べはとても重要
夜間、暗い中で行うオーロラ撮影では、日中の明るいうちに撮影地周辺の環境を確認をしておくことがとても大切です。夜間、手探りで移動するのは怖いものですが、事前に周辺の環境を見ておくだけで安心感が格段に違うものです。冬の撮影では雪が吹き溜まり深くなっている場所や、湖がちゃんと凍っているかなどをチェックして、安全に動ける範囲を確認しておきましょう。建物の入り口周辺などは雪が溶けて凍り、滑りやすい場所ができやすいので特に注意が必要です。秋の湖畔での撮影では、水辺の位置をチェックしておくことも大切です。
オーロラが出現してくると思われる方位の確認を済ませたら、大体の構図を決めておくのも絵作りのテクニックの一つです。カメラのモニターで見ると気づかず、実は電線が写ってしまっていたというのは良くある失敗例の一つです。明るいうちに撮影時に三脚を立てる場所を考え、構図にある程度の目処をつけておくと良いでしょう。突然、素晴らしいオーロラが出た時でも慌てないように、事前にしっかりと準備をしておくことが大切です。
コンパスを使い、オーロラの出現する方位を確認しておく。スマホ用のアプリも便利。
明るいうちに雪の深さや足場の悪い場所をしっかりとチェックしておくこと。
電線などの余計なオブジェクトが入らないように、構図の目処をつけておく。
構図の確認方法
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高感度撮影で試し撮りをする
明るいうちに構図を決めたとしても、暗い中でファインダーを使いながら構図を確認するのは、なかなか難しいものです。水平の取れていない写真はオーロラ写真で良くある失敗例ですが、これも構図の確認不足に原因があります。では、暗い中で構図を確認するにはどうすれば良いのでしょうか。一番手軽な方法は、高感度ISOに設定して試し撮りをすることです。ISO6400などの高感度撮影で試し撮りをしてみると画像にノイズは乗りますが、非常に明るい写真として写るはずです。カメラモニターで水平位置や周辺のオブジェクトを確認し、微調整しながら試し撮りを繰り返し、理想的な構図に近づけましょう。完璧にできないまでも多少意識するだけでも写真の仕上がりは変わってきます。カメラに「水準器」が内臓されている場合は、水平を取るのに非常に役に立ちます。
高感度でテスト撮影すると、画面が暗いときは気づかないものを確認できる。この写真では画面の下の方に余計なものが写り込んでいる。
せっかく良いオーロラが出ても、水平が取れてない写真は仕上がりが悪い。
写真の水平を取るには、カメラの水準器を活用するのが一番確実。
構図のアイデア
周辺の風景を活かすことが絵作りのコツ
最も基本となるテクニックは、周辺オブジェクトを活用することです。オーロラだけを撮影した場合は、誰がとっても同じような絵になりがちですが、風景写真と同じように周辺の環境をうまく取り入れると写真に個性が出しやすく、自分だけの作品作りを行えることでしょう。山や丘、木や森、川や湖が代表的なオブジェクトですが、山小屋、廃屋などの人工物も面白い絵作りとなります。構図のポイントはいくつかありますが、主役のオーロラが構図の7割から8割を占め、残りにオブジェクトが入るようにすると良いでしょう。
露光量(6.0秒 F3.5)| ISO感度(1000)
主役のオーロラを活かす
丘や木のシルエットが少し入るだけでも、写真に締まりが出ます。空が写真の8割ほどを占めると、バランスが良いオーロラ写真となります。
露光量(6.0秒 F3.5)| ISO感度(1000)
バランスを考える
左と同じ日に撮影。悪くはないのですが、木とオーロラの占める範囲のバランスが悪く、主役であるオーロラがいまいち目立っていません。
露光量(7.0秒 F4.0)| ISO感度(1600)
その場所ならではの特徴を活かす
月明かりに照らされた世界遺産クルアニ国立公園の山々とオーロラ。まさに、その場所だからこそ撮れるオーロラ写真を撮影しましょう。
露光量(12.0秒 F2.8)| ISO感度(1000)
オブジェクトで写真に味を出す
オーロラの形にそれほど特徴がない時は、積極的に木のシルエットなどを入れるのも面白いアイデアです。
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露光量(2.5秒 F2.8)| ISO感度(800)
湖面の写り込みを入れる
湖面に映り込むオーロラは、秋のオーロラ撮影の醍醐味。構図を決める際は空と湖面のバランスを考慮しましょう。
露光量(6.0秒 F2.8)| ISO感度(1000)
オーロラの形を活かす
オーロラに特徴がある時は、思い切ってオーロラの占める割合を増やしてみましょう。カーテン状のオーロラが上空を走る様子がよく伝わってきます。
露光量(15.0秒 F3.5)| ISO感度(800)
建物の明かりを取り入れる
建物の明かりを上手く活かすのも面白い。自分が利用している宿泊施設であれば、良い思い出になることでしょう。
露光量(71.0秒 F2.8)| ISO感度(800)
人工物で雰囲気を出す
廃屋などの人工物も、使い方次第ではその場所ならではの絵作りを可能とします。
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露光量(18.0秒 F4.0)| ISO感度(1600)
上空から降り注ぐオーロラ
オーロラ爆発などの素晴らしいオーロラが現れた時は、上空から降り注ぐオーロラを撮影するチャンス。三脚を真上に向けて、オーロラだけを写してみましょう。まるで宇宙から降り注ぐシャワーのように、神秘的な写真が撮影できることでしょう。
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露光量(20.0秒 F2.8)| ISO感度(1600)
撮影現場の臨場感を出す
オーロラを撮影している他のメンバーを入れると、撮影現場の雰囲気の伝わる写真が撮影できます。人物が動くとブレてしまうため、なるべく速くシャッタースピードは設定したいところですが、必ずしも必須条件ではありません。実際は人物が多少ブレていても写真の雰囲気にはあまり影響せず、逆に臨場感のある写真に仕上がる時もあります。
大胆な縦構図の活用
オーロラは時に非常に長くまっすぐと伸び、まるで龍のように上空を走る時があります。このようなオーロラの形の時は、大胆に縦構図も利用してみましょう。縦構図は構図が狭くなりがちなため、広角レンズが非常に役に立ちます。魚眼レンズなどの超広角レンズがあれば、迫力のある作品に仕上げることができるでしょう。
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露光量(2.5秒 F2.8)| ISO感度(1600)
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オーロラ完全ガイド制作スタッフ 小泉優 |
絵作りは現場の雰囲気を大切に!
オーロラガイドの仕事をしていると、本当に様々な場面でオーロラに出会うチャンスがあるのはラッキーですね。私が撮影する時に心がけているのは、なるべくその場その場の雰囲気を大切にすることです。この写真は2014年の9月に紅葉のキャンプツアーを行っている時に撮影しました。テントの中には読書用のライトを置いていたので、その灯りがキャンプ場の雰囲気を出してくれました。
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次ページは、カメラ機材を極北の寒さから守るテクニックを解説します。
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